自治体キャリア通信をお届けしますVol.3

完璧じゃなくていい、自分なりの管理職のかたちを探して

管理職は罰ゲームー。公民問わず、今、管理職を目指す若者が減っています。一方で、興味があっても踏み出せない、そんな悩みを抱える若者がいることも実感しています。

そもそも、管理職のハードルはなぜこんなに高いのでしょうか。管理職もまた一人の人間です。家族のことに心を揺らし、自分のキャリアに悩み、ときに不調を経験しながら、それでも役割を引き受けている。そんな姿は、案外見えにくいのかもしれません。

今回お話を伺ったのは、病気からの復職を経て、自分なりの管理職のあり方を探ってきた新宿区人材育成等担当課の青山課長です。病気復職を機に出会い、共に思考錯誤しながら回復を目指した元同僚に、なぜ管理職を目指したのか、どんな葛藤を抱えてきたのか、困難を乗り越え、今、管理職として何を成し遂げたいのか、その想いをインタビューしました。

Q.改めて、管理職を目指そうと思ったのは、何がきっかけだったのでしょうか。

当時の課長から受験を勧められたのがきっかけなので、自分の意志ではなかったですね。自分にはまだ早いと思って、はじめはお断りしました。でも、改めて「受験しなさい」と言われて、しぶしぶ申し込んだというのが正直なところです。ところが、試験日が次男の出産時期と重なってしまって、私は試験会場に行きませんでした。

そうだったんですね。

はい。で、翌週、課長のところに行って「受けに行けませんでした。子どもが生まれそうだったので」と伝えたんです。そしたら、かなり怒られましたね。「管理職っていうのはそういうもんじゃない。何があっても、這ってでも行くのが管理職なんだ」って。私は、それはちょっと違うんじゃないかと疑問に思いました。自分にとっては、子どもが生まれることのほうが、それ以上に大切なことだったので。まあ、もう10年以上前の話です。当時はそういう風潮もあったのかなという気がします。

でも、このことがあって、私は次の試験に落ちるわけにいかなくなったんです。そこまで言われてちょっと悔しかったし、初回は子どものことが理由で試験を受けませんでしたが、次回、普通に受けて落ちたらカッコ悪いなと思って。

Q.最初は渋々受験を申し込んだけれど、後には引けなくなったということですね。それでも違和感を抱えながら受験した、ということでしょうか。

まず、試験を受けるにあたって、管理職のイメージを考えました。管理職選考の筆記試験に合格すると、口頭試問に進みます。そうなると、なぜ試験を受けるのかというのを言語化しなきゃいけないわけです。さっきお話ししたような、反骨心みたいなのは理由にならない。

そこで、なぜ管理職になるのかを自分なりに考えると、過去の自分の課長たちが思い浮かぶわけです。彼らは何をしてくれたのかなあ、と考えた時に、「私の成長を支えてくれた」というのを非常に大きく感じました。

Q.受験前に、管理職になる意味を考えられたということですね。「成長を支えてくれた」というのは、具体的にはどういうことなのでしょうか。

はい。私は、最初の職場である生活保護のケースワーカーの後、2年間東京都へ派遣してもらい、それはとてもいい経験になったんですが、その後も現場の仕事ばかりしていたわけです。でも、ふと、長く働くことを考えた時に「このままでいいのかな」と。私は福祉職なのですが、公務員として事務能力を磨いておかないと、将来、どこかで困ることになるだろうと不安を感じるようになりました。

それで、そのことを当時の課長に相談したら、私の希望を叶えてくれて、事務が経験できる職場に異動させてくれました。後から考えると、ここが私のキャリアの転換点になりました。30歳の時です。

当時の課長は、私の将来に期待して希望を叶え、成長する機会を与えてくれた。こういう、人事異動を使って人を育てるというのは、管理職にしかできないことだと再認識したんです。

だから私も、管理職になったら職員の成長を支えようと。私の「管理職になったら何をしたいか」を、「人材育成」に据えようと決めました。

管理職への入口は、決して威勢のいいものではなかった。それでも、その経験を自分なりに咀嚼し、「人の成長を支える」という軸を見出していく過程に、青山課長らしさが滲みでています。

Q.人材育成に力を入れたいと思って一歩踏み出されたわけですが、実際に管理職になってみて、ギャップや苦労したことはありましたか。

最初に配属になったのは、区の外郭団体でした。外郭なので、課長ではなく、いきなり部長をやりなさいという辞令でした。

私の担当する部署は、正規職員が20人ちょっとぐらいで、すぐ下に課長、係長がいて、パートさんも含めると50人以上いました。まずは職員の声を聴きたいと思って、着任してすぐに一人ひとり面接をしたんです。そうしたこともあって、職員とは自分なりに信頼関係を築けたかなと思います。ただ、私の相棒となるべき課長さんとは、なかなか……考えが合いませんでした。

Q.課長との関係は難しかった。今振り返ると、どのように受け止めていますか。

当時は、関係づくりに非常に苦労しました。その方は外郭団体のプロパーで、私と同じで課長に昇任したばかり。10歳くらい年上でした。非常に頭が切れる方だったんですが、一方で頑固なところもあって。私の指示に対して、最初は「分かりました。やります」と言ってくれたんですが、途中からもう明らかに反発されてしまって。組織の運営そのものに難しい部分が出てきてしまいました。

Q.初めての管理職経験で苦しかったと思います。どう対処したのでしょうか。

とにかく課長に繰り返し自分の考えを説明するしかなかったです。今振り返ってみると、あの時の私は、理屈だけで押していたように思います。でも、職員が動くのは、理屈ではなく感情なんですよね。そこが抜けちゃっていたな、と。「理屈上正しいんだから、職員は動くのが当然じゃないか」というような思いがあったなと。その後、心理学などを勉強して気づいたことです。

Q.私も係長に昇任した当初、同じ失敗をしたと思っています。これまでプレイヤーの経験しかないと、役職に就いた時に「人を動かす」ことについて結構苦労する方がいらっしゃるんじゃないかなと思います。本来、どうすればよかったと思いますか。

そうですね。やはり、自分としても気負いがあったんじゃないかって思うんですよね。あの時は、区の上司から課せられた使命を全うしなければならない、と私も必死でした。だから余裕がなかったですよね。

一方で、その課長さんのことを今考えてみると、彼も課長になったばかりなので、戸惑っていたと思います。やりたいこともあったでしょう。そんな中に、区から突然、自分よりも年下の私がやって来たわけで。何もわからないくせに、色々指示してくる。それは、面白くないですよね。

その時、その課長さんが何をしたいのか、しっかり聞いてあげていれば、それを叶えてあげるかたちで、私も部長としてやりたいことを実現する。そういう運び方をしていれば、もう少し違ったんだろうなと。

Q.客観的に見れば、とてもよく分かりますよね。振り返ってみて気づいた、という感じでしょうか。

なんでしょうね。失敗を繰り返していく中で学んだりとか、少し余裕ができたことで、昔の自分を客観的に見られるようになったからかもしれません。

あとは、上司と自分の関係からそう感じるようになったのかもしれません。自分は、上司との関係の中で、どんな時にやる気が出るのか、あるいは無くなるのかを日々感じています。……ということは、最近になってやっと気がついたのかもしれないですね。

Q.役所のキャリアって、係長以上で初めてマネジメントを経験するじゃないですか。年齢も結構上がって。民間のように早くからプロジェクトマネージャーのような経験を積む機会がありません。アンケート調査の結果を見ても、マネジメントへの不安がとても大きいですよね。今の青山課長の話のようなことを伝える機会があったらいいのに、と思いますね。

確かに。そういう話ってなかなか教えてもらえないですよね。

Q.「気負う」ということで言えば、青山課長にとって「理想のリーダー像」があって、そのリーダー像が気負わせたのではないかと思ったりもするのですが、どうでしょうか。

そうですね。自分の思っていたリーダー像ということで言えば、私のキャラは、「俺についてこい」というタイプではないことは自分でも分かっていました。では自分には何ができるのかというと、「職員を支える」ということだろうなと。

それもあって、最初の外郭団体では、まず職員の話を聴こうと思ったんですね。職員さん個々のやりたいこととか、家庭の状況とか、そういうことをまず知っておこうと思いました。信頼関係をつくりたいと思ったんですね。組織としてやるべきことを進めていくためには、職員のことを知らないといけないと。ただ、さっきお話しした課長さんとは……何かうまくいかなかったですね。

Q.課長だけは別だったというのは、課長に対して何か特別な期待があったんでしょうか。

私の「あるべき像」を押し付けてしまっていたかな、と思います。「課長にはこうあって欲しい」とか、「想いが私と同じであって欲しい」と考えていたのでしょう。

ー理想を持って管理職になったからといって、すぐにうまくいくわけではありません。むしろ理想があるからこそ、力が入りすぎてしまうこともあります。青山課長が口にした「気負い」という言葉は、マネジメントの難しさを、とても率直に表しているように思えます。

Q.直属の部下には、同じ想いであって欲しい。上司も人間で、孤独だということの表れだと感じます。ところで、昨年は職員のエンゲージメント調査に着手されました。きっかけや想いを伺ってもいいですか。

はい。エンゲージメント調査の前に、職員のメンタルヘルスの不調について、調査・分析をしました。実は、私はその外郭団体に3年間在籍しましたが、色々あって、最後の半年間はメンタルヘルス不調で休職してしまいました。とてもつらい経験でした。

その後、復帰して回復してきた時に、自分と同じようにメンタルヘルス不調で休職している職員がたくさんいることを知りました。私と同じように苦しむ職員を1人でも減らしたい、減らさなければならない、という思いが出てきて。そのために、まずはどんな理由で休職したのかを分析する必要がありました。様々なデータを取って、分析して、対策を議論した中で、「職員のエンゲージメントを向上させなければいけない」ということを考えたわけです。

Q.メンタルヘルスの不調者を減らしたいという想いから始まったエンゲージメント調査というわけですね。ところで、メンタルヘルス不調の分析には様々な障壁もあったと思います。不調の理由を拾うのはなかなか難しいところでもあると思うんですよね。やってみてどうでしたか。

メンタル疾患の要因はやはり色々あると思います。分析を始めた当初、部長からは「職員の個人因子にはなかなか踏み込めないけれど、職場としてできるところに、的を絞って対策しよう」という助言をもらいました。

職場環境の原因を紐解いていくと、「上司・同僚との関係がうまくいかなかった」というのが出てくるので、そこは改善できるのではないかと思いました。そして、それ以外にも職員は何か働きづらさを抱えてるんじゃないかと。それが、エンゲージメント調査につながっていきます。部長とも相談し、プロジェクトチーム(PT)を立ち上げて検討しよう、ということになりました。

Q.エンゲージメント調査自体は委託で終わると思いますが、PTを立ち上げた理由は何だったのでしょうか。

そうですね。確かにエンゲージメント調査をするだけなら、委託で済みます。でも大切にしたのは、対策を打っていくにしても、人事や人材育成部門だけで考えて「この対策やりましょう」と言ったところで、おそらく現場の賛同は得られないと思ったんです。現場で仕事をしている職員が何を考えているのか、何を感じているのか、何をしたいと思っているのか、そういった生の声をしっかり聞かなければいけないと思いました。そこは一番こだわったところです。とにかく職層も幅広く、年代も幅広く、できれば職種も幅広く。そういうメンバーに集まって議論してもらいたいと思って、全庁に公募をかけました。

Q.何かを進める上で、声を聴くというのは大切なことですね。そのこだわりはどこから来たのでしょうか。

他自治体の事例をリサーチしたこともあり、そうしたほうがいいと思いました。若手だけでも、係長だけでも、管理職だけでもダメで、色々な立場の職員の声を聴くべきだと思いました。PTは、役所の縮図みたいなものにしたいと思いましたね。

Q.実際、PTを1年運営してどうだったのでしょうか。

概ね思ったような方向に進められました。PTメンバーそれぞれの立場は違っても、思っていることを遠慮なく発言してもらえたかなと思っています。

そのために、最初のPTの集まりでは、役職を意識させないように、お互い「さん付け」で呼び合おうねと呼びかけました。若い職員は最初は抵抗があったようですが、段々とお互いに人となりがわかってくると、遠慮しないで自分の意見を言えるようになったみたいです。

さらに、PTメンバーでなくても議論に参加できる仕組みを作りたいと思いました。もちろん、そうなるように色々と仕掛けをしました。

Q.どんな仕掛けですか。

PTで話し合っていることを、しっかり全庁に知らせなければならない。PTだけで物事を決めたら、「あの意識高い系の人たちが決めたことなんでしょ」と、他人事になってしまう。それは避けたかったので、月1回のPT会議の資料と議論の様子を、写真付きの報告書にして全庁公開しました。併せて、全庁の誰でも、匿名で意見が出せるような仕組みにしました。

Q.全職員を対象に巻き込む仕掛けというのは、大変参考になりますね。やってみていかがでしたか。

意見は毎回30件くらいあって、累計150件以上になりました。匿名でいいという環境を作ったことがよかったと思います。参加しない人はしなくても、それは本人の選択としてよいと思います。意見を言うにせよ言わないにせよ、主体性を生み出せたのではないかと思います。もちろん意見には全部目を通しました。採用できるものもあれば、難しいものもありますが。

公募意見をやってみて一番驚いたけれど、嬉しい誤算としては、取組に対する批判的な意見があったことです。「今回も、やったフリするだけでしょう。ごまかすんでしょう。期待なんかしてませんよ」って。すごい長文でした。でも、それはそれで嬉しかった。

Q.かなり辛辣な意見だと感じますが、「嬉しい」とはどういう意味でしょうか。

「頑張ってください、応援してます」という意見ももちろん嬉しいけれど、批判的な意見は、心からの本音だなと思いました。実は、その意見の中には、私がこれまでこの組織に対して感じてきたことも書かれていて。私もついつい熱くなってしまい、本人に直接メールを返してしまいました。

(注 ほとんどの意見が匿名の中、この方は実名で意見してくれていました)

Q.それはそうですね。想いがあるから言ってくる。どうでもいいと思っていたら意見なんかしないですよね。お聞きしていると、進める中で、色々とご苦労もあったと思いますが、どんな風に乗り越えてきたのでしょうか。

初めての取組みだから、道すじがほとんど見えなくて、全然順調ではなかったですよね。みんなが言いたいことを言える環境を作ったことで、PTメンバー、上司、そして職員(公募意見)の三方から違う意見が飛んでくる。その意見の調整がとにかく大変でした。でも最終的には、「私はこうしたい」という自分の想いを軸に持っていたことで、乗り越えてきたのかなと思います。

Q.その想いとは。

そうですね。今回の取組でいうと、これから長く役所で働く人たちの意見を大切にしよう、若い職員の意見は大事にしたいと思いました。なるべくそれを曲げないようにしたいのですが、組織で通していくためには、私の上司やそれ以外の職員の意見もないがしろにはできません。その中でバランスをとるということに、1年間腐心しましたね。

ー青山課長自身が不調を経験したことは、単なる個人の出来事では終わっていません。だからこそ、対策を上から与えるのではなく、どんな意見も受け止める、現場の声を聴きながら進めるというこだわりに繋がったように感じます。

Q.PTでは、エンゲージメント向上に向けて、どのような対策案が出たのでしょうか。

一番多かった意見は、テレワークの導入です。あとは業務改善ですね。役所の様々な無駄を省きたい。そして、自分たちのキャリアが見えるようにしたい。職員たちは日々一生懸命仕事しているのに、成長を実感できる仕組みになっていない。これは、エンゲージメント調査でもはっきり結果として現れたし、PTメンバーからも意見が出ました。このあたりが軸として上がってきましたね。

Q.一朝一夕で進められることではないと思いますが、まずは何から進めていきたいですか。

そうですね。私が人材育成部門にいることもありますが、まず取り組みたいのは、キャリア形成ですね。職員はそれぞれ頑張っているのに、自信を持てていないんです。日々経験を積んでいるのだから、必ず何かしらのスキルは身についているはずなので、それをしっかり可視化してあげるっていうのが必要だなと思っています。

スキルを可視化した上で、管理職が職員のキャリア形成の視点を持って育成をしていくことが必要でしょうね。職員が「今年はこれを頑張った、能力が上がった!」と思える仕組みを作っていきたいなと。

Q.管理職になる理由として定めた「人材育成をやる」という想いとつながってきますね。青山課長にとって、管理職の魅力とは何でしょうか。

管理職の魅力は、やはり、やりたいことを実現できる可能性が非常に高いというところだと思います。私は管理職8年目ですが、ようやく実感できたことでもあります。たまたま、今やりたい仕事をやれているというのもあるかもしれないんですけど。

これまでは、上司から指示されたことをやるのが精いっぱいでした。その中に、ちょっとだけ自分の想いを吹き込んできたのかな。でも、経験を重ねてきて今、自分のやりたいことをど真ん中にできている。

Q.今、想いが叶っているのは、当然これまでの積み重ねの結果だと思いますが、大切なのは環境要因と、自分の心の持ちようと、どちらでしょうか。

両方ありますね。環境面でいうと、今の上司がこの取組みに理解を示してくれたことは大きいですね。「エンゲージメントなんて、そんな役に立たないことやらなくていい」と言われたらそれまでです。

自分としては、自信が持てるようになったことが大きいと思います。今、自分のやることや想いに対して、8割型は正しいと信じてやれています。以前読んだ本に、「40歳を過ぎたら、自分の思ったとおりやっていい。成人してから、大人として20年“研修”してきた。だからもう迷わずに自分のやりたいことをやっていいんだ」ということが書いてありまして。ハッとしました。

自分を信じていいんだ、ということですね。

はい。メンタルヘルス不調で休職したのも大きかったですね。それまで、周囲にどう評価されるんだろうということばかりを気にしていたから、病気になった面もあると思うんです。でも、病気になって、回復して、考え方が変わりました。自分のことを大事にしようという考えに変わったと思います。

Q.先ほど、自信が持てない職員が多いという話がありました。そうした職員にかけるとしたら、どんな言葉でしょうか。

そうですね。自信がないというのは、何に自信がないのかというところを聴いていかないといけないとは思いますね。一概にどうということは言えません。でも、自信がないというのは「自分にはできない」と思っているということで。「できることもあるよね、あなたにもできること、すでにできていることもある」ということを伝えないといけない。その人の強みを見つけて、伝えてあげたいと思います。

自分はできる存在なんだ、ということが大切だということですね。

私は復職した時に、板垣さんにとにかく肯定してもらった。自信を失っていた私に、「あなたは強みがある」「あなたはここにいても大丈夫だよ」と言ってもらえた気がしたんです。その経験が大きかったんですよ。

それは、嬉しいですね。私も初めから関わり方を知っていたわけではなかったのですが、とにかくメンタル不調に悩む人が多かったですし、本を読んで見よう見真似で関わってきたことはありますね。むしろ私自身は、その回復をその場で見させてもらって大きな学びになりました。肯定するってとてつもない力なんだなと。自分にもずっと自信のなさというのはありましたが、人の回復を見ることで、自分自身にもそうした方がいいんだなと。子育てにも、大きく影響したところがあります。

確かに。これまで自分の子育てを振り返ってみると、子どもを肯定してあげられていないですよね。「それやっちゃダメでしょう、こうじゃなきゃダメでしょう」って、否定の連続。それでは子どもも自己肯定感が下がってしまいますよね。

本当にそうですよね。やらなければダメ、やってはダメ。もちろん親心あってのことなのですが、ダメばかりで関わってきた気がします。

ほんとダメしかないですね。笑 周囲を見ていても、感謝の言葉が少ないなと思います。仕事でいえば、職員が資料を作ってくれて、説明してくれただけでも、本当は「ありがとう」ですよね。それなのに、まずダメ出しから入ってしまう。職員はダメ出しが怖いから周到に準備する。あれも聞かれるかも、これも質問されるかも……って、一生懸命すぎるくらいやる。うまくいけばいいけれど、ダメ出しが積み重なってしまえば、当然心が折れます。自信もなくなりますよね。

Q.管理職としてダメ出しをしなければいけない、管理職自身が負っている背景もあるように思いますが、どう考えますか。

やはり「気負い」ですかね。管理職もさらに上からの期待やプレッシャーを受けているわけですから、できないと言いたくないし、言えないですよね。そういうところがあって、職員にもきつく当たってしまう。自分が要求しているレベルに達していなければ、強く言ってしまう、というようなことでしょうか。

人は理屈だけでは動かないー自信を失うのも、取り戻すのも、関わる言葉次第。自らの苦い経験や実感が、今の青山課長の人材育成の軸になっているように思います。

Q.地方自治体の仕事自体が、外からの評価が非常に厳しくなっているという環境要因も大きい気がしますね。青山課長として、どんな組織をつくっていきたいですか。

頑張った人が報われる組織でしょうか。その人なりに頑張ったことを認めてあげる、そして、職員も成長を実感できる。お互いに認め合える、そういう組織を創らなくてはいけない、創りたいと思います。

Q.最後に、人材育成等担当課長として職員全体にメッセージを伝えるとしたら。

気付いていないかもしれないけど、一人ひとり誰しも力があるはずです。それに気付いて欲しいし、その力が発揮できれば、誰もが活躍できるはずです。自分の強みを知って、組織の力にできるような、そういう仕組みを作っていきたいですね。職員の皆さんには、仕事で自分の力を発揮することで、充実した人生を送って欲しいと思います。

私たちは、多くの場合、人のほんの一面しか見ていません。
管理職もまた一人の人間であり、口にしないだけで悩みや迷いを抱えています。
それなのに、「弱音を吐いてはいけない」「リーダーは揺らいではいけない」という空気が、その苦しさを見えなくし、役職の魅力まで遠ざけてしまっているのかもしれません。
管理職にも色々なかたちがあっていいし、完璧でなくていい。本当は、職員と管理職の間には、もっと仕事のことや生き方のことを泥臭く語り合う時間があっていい。そうした対話の積み重ねが、人を支え、組織を変えていくのだと私は信じています。