自治体キャリア通信をお届けしますVol.1(富山県)

 

「そうですね。公務員を志して入ってくる方は、何らかの形で住民の方々の役に立ちたいという想いを胸に抱いていると感じています。」

民間と公務員の大きな違いは、人事異動のスパンがとても短く、業務範囲が広いことだと感じています。広範な業務分野の中から自分が希望したピンポイントの業務につける確率は、非常に低くなるわけです。

例えば『富山県の魅力をPRしたい』と思う方が、真っ先にイメージするのが広報課だとしましょう。そういう方が、他の課に配属になったことで『ショックを受ける』ということが起こっていると思います。

異動についても同じことが言えます。例えば、富山県の事務職の場合は、一つ目の所属と二つ目の所属は、仕事内容が大きく異なる部署に異動することが多いんですね。色々な業務を積んで経験を積んでほしいわけですが、その意図が伝わらないと『自分はここで何のスキルが身につくんだろう』と悩み、立ち止まってしまう若手職員が多いのではないかと感じています。

日々の業務に忙殺されて、やりたいこと(Will)よりやらねばならないこと(Must)に追われる中で自分のWillを持ち続けることは結構難しいんですよね。

でも、管理職になれば、Willの実現に近づくことができると思っています。

管理職層と若い方が話をする機会が少ないのかもしれません。私の場合、割と若い頃に管理職の方から「アイディア出しに一緒に付き合ってくれないか」と声をかけて頂いたことがあります。その方と相談をしながら、新たな組織の姿というのを作り上げていくという経験が、今思えばとてもプラスになったと思います。

管理職の方が、部下なり、あるいは斜め下の部下なりとどんな風に接しているか、自分の仕事の向き合う姿勢を伝えられているか、というところが大きいと感じます。

「そうですね。一つには、ライフサイクルだと思います。生活にエネルギーを割かなければいけない時は誰にでも訪れるわけで、その時は、仕事に100%注ぐことは諦めようとなるのでしょうが、その後『一生このままでいいかな』と思ってしまう方がいると見ています。
能力も高くて、まだまだ力を発揮できるはずなのに『自分は管理職にはならなくていいんです』と決めてしまっている人がいると感じます。もう一つには、自分の能力にタガをはめてしまっている方もいると感じています。

そうですね。ライフイベントで一旦はキャリアアップから離れた方などについては、どこかのタイミングでそういう方を対象としたキャリア相談の機会があってもいいのかもしれません。

組織としても課題があると思います。これまでどちらかというと出世できる、一般的に『優秀』とされる方のイメージがあったと思います。すると、自分はイメージに合わないなって思うと降りるしかない。いわゆる単線型の人事の仕組みしかこれまではなかったわけです。
民間でいうスペシャリストのような制度を準備することも一つだと思います。今のところまずは、キャリア相談で相談者のキャリアを一緒に考えることで、対応できればと思っています。

やはり、仕事を通して自己実現している人だと思います。イノベーターかアーリーアダプターということになるのかもしれないです。

でもそうすると『その人だからできたんじゃないか』と取られてしまう危険もあって、そういう方(キラキラ管理職)が、どんな想いで、どう乗り越えてここまでできたのか『過程』を伝えることが大切なのかもしれません。

真面目な話、組織で仕事をしていく中で、上司の立場になると仕事のできる幅が違います。「一段役職を登ると、見晴らしが変わってやりたいことがぐっと現実味を帯びて広がるーその景色を見てみない? 」という感じで誘ったり。

そうですね。あの人キラキラしてる管理職だなって思う人がいたら、その人のキャリアストーリーみたいなものをインタビューして庁内で共有することも、キャリア開発支援の一環としてやればよいのかなと思います。

私自身、これまでキャリアを振り返る機会が何度かありました。たとえば、学生時代に理系から文系に転じたことや、就職の際に県庁を受けるかどうかで親と意見が対立したことなどです。

また、妻も県職員なのですが、若い頃は女性であるがゆえに、職場でやりづらさを感じる場面も多かったらしく、相談を受けることもありました。

県庁職員の長いキャリアの中で「自分はこの先、県庁の中でどうキャリアを積んでいくのか」を真剣に考えた時期もありました。ただ、その時間があったからこそ、今では自分が何をやりたいのか、何に面白さを感じているのか、どの方向を目指しているのかを説明できるようになったと思います。

職員キャリア開発支援センターは、ちょうど良い時期に流れをつかんで開設できたと感じています。

私が役職定年である60歳を迎える年度に「人材育成基本方針」を策定することとなり、私自身、その構想づくりから関わることができました。上司にもキャリア支援に理解のある方がいて、想像以上にスムーズに組織化が進んだところがあります。

現在、相談室には、外部相談員のほか、私を含めてキャリアコンサルタント資格を持つ職員が3名、資格は持たないものの相談対応を行っている職員が4名の計7名体制 です。

 また、富山県には「庁内複業制度」があり、キャリアコンサルタント資格を持つ職員 なら、相談員として活動してもらうことも考えています。こうした仕組みを少しずつ整えながら、県庁全体でキャリア支援を広げていく段階にあります。

むしろ、そういう方こそキャリア相談を通して少しずつ自分の思いや考えを整理していくことができる。そんな場所にしたいと思っています。

悩みが言葉にならない人を、そっと一歩後押しできるような仕組みを、これからつくっていきたいですね。

荻布所長が率いる職員キャリア開発支援センターは、その物語を安心して語れる場所であるーそんな確信を抱きました。

職員一人ひとりが、自分の強みや思いを活かしながら、いきいきと働ける県庁を。
荻布所長のまなざしは、静かに、けれど確かに県庁の未来を見つめているように感じました。